小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)の変更

平成27年の労働者派遣法の改正(以下改正派遣法とします)では、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別は廃止され、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制に一本化されました。これに伴い、小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)が講じられていましたが、改正派遣法施行後、一定期間を経過したことから、配慮措置の一部について見直しが行われています。

具体的には「労働者派遣事業関係業務取扱要領」が改正され、平成28年9月30日以降、下記の小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)については、(旧)特定労働者派遣事業を行っている事業者に限定して適用されることになりました。

  1. 1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主(当分の間)

・ 基準資産額  1,000万円以上

・ 現金・預金の額 800万円以上

2. 1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下 である中小企業事業主(施行後3年間)

・ 基準資産額   500万円以上

・ 現金・預金の額 400万円以上

小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)は、(1)改正派遣法の施行日前から特定労働者派遣事業を営んでいた事業者が、円滑に許可制の労働者派遣事業に移行できるようにするためのものでしたが、合わせて(2)施行日前に、新たに特定労働者派遣事業の実施に向けた準備をしていた事業者もいると考えられることから、円滑に許可を取得できるように、一定期間配慮するものでした。そのような趣旨でしたので、改正派遣法の施行から1年となる平成28年9月30日で、上記(2)については配慮措置の対象から外して、上記(1)についてのみ配慮措置を認めることとされました。

平成28年9月30日以降、新規に労働者派遣事業を行おうとする事業主は、小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)の対象外となりますので、資産要件は下記のとおりとなります。

・ 資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額(基準資産額)が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。

・ 上記の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。

・ 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。

小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置(資産要件の緩和)の変更の詳細については、こちら(厚生労働省ウェブサイト)をご覧ください。

なお、当事務所で労働者派遣事業等の有効期間の更新のための「合意された手続実施結果報告書」等の発行業務をお引き受けいたしています。詳細につきましては、こちらのページをご覧ください。

年末年始休業のお知らせ

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
誠に勝手ながら、2016(平成28)年12月29日(木)から2017(平成29)年1月4日(水)まで、谷公認会計士・税理士事務所は、休業させていただきます。
本年も当事務所をご愛顧いただきありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願いいたします。

ローカルベンチマーク(非財務情報)

ローカルベンチマークとは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツールのひとつです。経済産業省のwebサイトにおいて、「ローカルベンチマークツール」が公表されています。「財務情報」(6つの指標)と「非財務情報」(4つの視点)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握するのに役立つということは、9月19日の記事でお知らせさせていただきました。財務情報については、10月23日の記事で少し詳しく記載させていただきました。今回は、非財務情報(4つの視点)について、少し詳しく記載させていただきます。

企業の実態や経営上の課題を理解するためには、財務情報だけではなく、非財務情報の把握が重要となります。また、非財務情報の分析を行うことは、財務数値の裏付けにもなります。非財務情報に着目して企業の強みや弱み、付加価値を生み出す源泉を理解することは、財務数値から情報を得にくい小規模の企業については、特に重要だと思われます。「ローカルベンチマークツール」では、非財務情報について、次の4つの視点による分析を行っています。

①経営者への着目
中小企業等においては、経営者が与える影響が大きく、経営者の優劣が企業の優劣を左右する面が強いと思われます。そのため、「経営者」自身について知ることが重要となります。
具体的には、経営者の事業に対する思い、事業の方向性、ビジョン、経営理念、地域経済界における立場、経営手腕などを知ることが重要となります。
また、事業の持続性を推し量る観点から、経営者が高齢の場合は事業承継の方針(後継者の有無)を確認することも欠かせません。

②企業を取り巻く環境、関係者への着目
企業を取り巻く市場環境を把握するとともに、販売先や取引先企業からの評価という視点も欠かせません。具体的な指標としては、顧客リピート率、主力取引先企業の推移などが考えられます。
また、企業経営において必要不可欠である従業員に関する項目につきましては、各項目間の関連性に着目するとともに、業界・地域内の平均と比較することで、企業の実態が見えてきます。具体的な指標としては、従業員定着率、従業員勤続日数、従業員の平均給与、年齢構成などが考えられます。
さらに、取引金融機関の数と推移を見ることで、企業に対する金融機関のスタンスや企業とメインバンクとの関係などを推し量ることができると思われます。そのような観点から、金融機関との対話の頻度や内容(企業の経営課題・将来性等)も重要な視点と言えるでしょう。

③事業への着目
企業の事業が何で収益を上げているのか、それをどのような仕組みで実現しているのかという点を理解するとともに、事業の強みと課題がどこにあるのかを把握することが重要です。具体的には、会社及び事業の沿革、商品等が会社から顧客に渡る過程における受発注、引渡し、代金決済等の流れ、市場規模・シェア、競合他社の状況、技術力、販売力の強みと課題などを把握することが重要と思われます。

④内部管理体制への着目
中小企業においては、属人的な経営も多いことが想定されることから、どの程度内部管理体制が整っているかという視点も重要と思われます。また、会社全体の方向性が合っているかを見るため、経営目標が社内で共有されているかを確認することも大切です。
内部管理体制を把握する際、会議の質(議題内容、経営目標について議論されているか、経営者以外の重要人物の有無等)を見ることも有効と思われます。そして、事業の推進に必要な人材が配置されているか、育成するシステムが構築されているかという点も着目する必要があると言えます。さらに、コンプライアンス上の問題がないかを検討することも大切だと言えます。

「ローカルベンチマークツール」はこちらの経済産業省のWebサイトをご覧ください。