ローカルベンチマーク(財務情報)

ローカルベンチマークとは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツールのひとつです。経済産業省のwebサイトにおいて、「ローカルベンチマークツール」が公表されています。「財務情報」(6つの指標)と「非財務情報」(4つの視点)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握するのに役立つということは、前回(9月19日)の記事でお知らせさせていただきました。今回は、財務情報について少し詳しく記載させていただきます。

決算書から得られる「財務情報」はいろいろとありますが、「地域企業 評価手法・評価指標検討会」で、企業の成長性や持続性等を把握し、経営者等と金融機関・経営支援機関等が対話を行うきっかけとなるベンチマークとして、特に有効な指標として絞り込んだものが下記の6つの指標です。これらの指標を貫く考え方は、企業の成長性や持続性を評価する上で、事業価値(事業から生み出されるキャッシュフロー)を把握するということがその根幹にあります。

具体的には、「フロー」に関する指標から①売上持続性、②収益性、③生産性、④健全性、⑤効率性、に関する5つの指標に、企業の現状の体力を評価する観点から、⑥安全性に関する「ストック」の指標を加えた合計6つの指標が、ローカルベンチマークの指標とされています。以下では、それぞれの指標の計算方法等について説明させていただきます。

①売上高増加率(売上持続性)
売上高増加率(%)は、(売上高/前年度売上高-1)×100%で計算します。
企業の成長ステージの判断に有用な指標です。

②営業利益率(収益性)
営業利益率(%)は、営業利益/売上高×100%で計算します。
事業性を評価するための、収益性分析の最も基本的な指標であり、本業の収益性を測る重要な指標です。

③労働生産性(生産性)
労働生産性は、営業利益/従業員数で計算します。
成長力、競争力等を評価する指標です。キャッシュフローを生み出す収益性の背景となる要因として考えることもできます。

④EBITDA有利子負債倍率(健全性)
EBITDA有利子負債倍率は、(借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費)で計算します。
有利子負債がキャッシュフローの何倍かを示す指標であり、有利子負債の返済能力を図る指標の一つです。

⑤営業運転資本回転期間(効率性)
営業運転資本回転期間は、(売上債権+棚卸資産-買入債務)/月間売上高で計算します。
過去の値と比較することで、売上高の増減と比べた運転資本の増減を計測し、回収や支払等の取引条件の変化による必要運転資金の増減を把握するための指標です。

⑥自己資本比率(安全性)
自己資本比率(%)は、純資産/総資産×100%で計算します。
総資産のうち、返済義務のない自己資本が占める比率を示す指標であり、安全性分析の最も基本的な指標の一つです。自己資本の増加はキャッシュフローの改善につながります。

なお、「ローカルベンチマークツール」はこちらの経済産業省のwebサイトを、前回(9月19日)の記事はこちらをご覧ください。非財務情報についてはこちらをご覧ください。

社会福祉法人の監査

平成28年9月26日に厚生労働省の社会保障審議会福祉部会より、「社会福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う主な政省令事項について(案)」が公表されました。この中で会計監査人の設置義務法人の範囲について、具体的な案が示されています。
「社会福祉法等の一部を改正する法律」(平成28 年法律第21 号)においては、一定の事業規模を超える法人に対して、会計監査人による監査を義務付けることとされました。
この一定の事業規模については、社会保障審議会福祉部会報告書(平成27年2月12日)において、収益が10億円以上の法人又は負債が20億円以上の法人とすることが適当とされています。

しかし、会計監査人の導入については、選任までに、予備調査を含め、一定の期間が必要となります。また、監査を受ける社会福祉法人においても、監査を実施する公認会計士等においても、会計監査人制度・社会福祉法人制度等への理解及び態勢整備等の準備が必要となります。このような状況を踏まえ、会計監査人制度を円滑に導入し、より多くの社会福祉法人に安定的に根付かせていくために、段階的に制度を導入する案が示されたようです。具体的には、以下のとおり段階的に対象範囲を拡大する案が示されています。

・平成29年度、平成30年度は、収益30億円を超える法人又は負債60億円を超える法人

・平成31年度、平成32年度は、収益20億円を超える法人又は負債40億円を超える法人

・平成33年度以降は、収益10億円を超える法人又は負債20億円を超える法人

ただし、段階施行の具体的な時期及び基準については、平成29年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえ、必要に応じて見直しを検討するとされています。

なお、上記の収益とは、最終会計年度に係る経常的な収益の額として厚生労働省令で定めるところにより計算した額(法人単位事業活動計算書のサービス活動収益計の項目に計上した額)のことです。また、負債とは、最終会計年度に係る法人単位貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額のことです。

今回、公表された政省令案は、今後パブリックコメントを行い、平成28年10月下旬から11月を目途に公布される予定です。

より詳しいことは、第19回社会保障審議会福祉部会 資料(厚生労働省のwebサイト)をご覧ください。

(追伸)
厚生労働省より、「社会福祉法人における会計監査人に係る調査と平成31年4月の引下げ延期について(周知)」(事務連絡 平成30年11月2日)が出されています。

平成29年4月1日以降に開始される会計年度から一定規模(収益30億円を超える法人又は負債60億円)を超える社会福祉法人に公認会計士監査が導入され、会計監査人の監査が開始されています。

平成31年度からは、収益20億円を超える法人又は負債40億円を超える法人へ対象範囲を段階的に引下げる予定でしたが、会計監査導入の為の準備期間等を考慮し、平成30年4月から、会計監査人の設置基準を引き下げることは行わないこととされました。

詳細につきましては、当事務所の こちらのページをご覧ください。