「税務」カテゴリーアーカイブ

住宅宿泊事業(民泊)により得た所得の税金

2018年6月から施行されている住宅宿泊事業法に基づき、同法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる民泊)を営むことで生じる所得は、雑所得として所得税の課税対象となります。所得税法上、「不動産の貸付けによる所得」は、原則として不動産所得に区分されます。しかし、住宅宿泊事業は、以下の点において、一般的な不動産の貸付け(賃貸)とは異なるため、原則として雑所得に区分されると考えられます。

・宿泊者の安全等の確保や一定程度の宿泊サービスの提供が、宿泊施設の提供者に義務づけられている。

・利用者から受け取る対価には、部屋の使用料のほか、寝具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内の清掃費、日用品費、観光案内等のサービスの提供の対価などが含まれている。

・住宅宿泊事業に利用できる家屋は、現に人の生活の本拠として使用されている家屋等に限定されており、その宿泊日数も制限されている。

ただし、不動産賃貸業を営んでいる事業者が、契約期間の満了等による不動産の貸付けを終了した後、次の賃貸契約が締結されるまでの間、当該不動産を利用して一時的に住宅宿泊事業を行った場合に得る所得は、雑所得とせず、不動産所得に含めることも認められています。

また、専ら住宅宿泊事業による所得により生計を立てているなど、その住宅宿泊事業が、所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合には、その所得は事業所得となります。

住宅宿泊事業による所得金額は、住宅宿泊事業に係る収入金額から必要経費を控除することで算出します。必要経費に算入できる費用には、例えば次のようなものがあります。

・住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料

・住宅宿泊管理業者等に支払う管理費用や広告宣伝費

・水道光熱費

・通信費

・非常用照明器具の購入及び設置費用

・宿泊者用の日用品等購入費

・住宅宿泊事業に利用している家屋の減価償却費

・固定資産税

・住宅宿泊事業用資金の借入金利子

住宅宿泊事業による所得を得るために支出した費用のうち、住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料や住宅宿泊管理業者に支払う管理費用や広告宣伝費など、専ら住宅宿泊事業を行うための費用については、その全額を必要経費に算入することができます。

それに対して、水道光熱費、通信費、減価償却費、固定資産税など、業務用部分と生活用部分の費用の両方が含まれているものについては、住宅宿泊事業に関する部分(業務用部分)の金額のみ必要経費に算入することができます。

住宅宿泊事業に関する部分の金額については、合理的な方法により区分して計算することになります。例えば、主に住宅宿泊事業に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合や実際に宿泊客を宿泊させた日数を基にするなどして計算することが考えられます。

なお、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃等は必要経費に算入できませんので注意する必要があります。

住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の所得区分や必要経費の範囲についての詳細、当該事業を営む場合の住宅借入金等特別控除の適用等についは、こちら(国税庁webサイト)をご確認ください。

事業承継税制(平成30年度税制改正)

平成30年度の税制改正において、事業承継税制について、これまでの措置(以下「一般措置」とします)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、相続税の納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置(以下「特例措置」とします)が創設されました(2018年1月1日から2027年12月31日までの相続または贈与について適用)。

事業承継税制とは、後継者である受贈者・相続人等が、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(円滑化法)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

特例措置を受けるためには、会社の後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関の所見を記載の上、2023年3月31日までに都道府県知事に提出し、その確認を受けることが必要です。

一般措置と特例措置を比較すると下記のような違いがあります。

(対象株式数及び納税猶予割合)
一般措置では、納税猶予の対象になるのは、発行済議決権株式総数の2/3までであり、贈与税の納税猶予割合は100%ですが、相続税の納税猶予割合は80%です。そのため、相続税については、実際に猶予される納税額は全体の約53%(2/3×80%)にとどまることになります。

特例措置では、納税猶予の対象株式数の上限を撤廃し、議決権株式の全てが猶予対象となり、相続税についても納税猶予割合は100%に拡大されています。そのため、事業承継に係る金銭的な負担はゼロとなります。

(承継パターン)
一般措置では、一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみが対象となります。

特例措置では、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象になります。

(雇用確保要件)
一般措置では、事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められています。仮に雇用8割を維持出来なかった場合には、猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要があります。

特例措置では、5年間の雇用平均が8割を維持出来なかった場合でも猶予は継続可能となっています。ただし、5年間の雇用平均8割を満たせなかった場合には、その理由の報告が必要となります。また、経営悪化が原因である場合等には、認定支援機関による指導助言が必要となります。

(経営環境変化に応じた減免制度)
一般措置では、後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税を納税するため、税負担が過大になる可能性があります。

特例措置では、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免することにより、経営環境の変化による将来の不安を軽減しています。

(相続時精算課税の適用範囲)
一般措置では、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫への贈与が、相続時精算課税制度の対象となっています。

特例措置では、60歳以上の贈与者から、20歳以上の後継者への贈与を相続時精算課税制度の対象とされていますので、贈与者の子や孫でない場合でも適用可能となっています。

相続税の申告書と「法定相続情報一覧図の写し」

これまで相続税の申告書には(1)の書類の添付が必要でしたが、平成30年度の税制改正により、平成30年4月1日以後は、(1)の書類の代わりに(2)または(3)のどちらかの書類を添付することが可能となりました(引き続き(1)の書類も添付可能)。
(1)「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの
(2)図形式の「法定相続情報一覧図の写し」
(3)(1)または(2)をコピー機で複写したもの

「法定相続情報一覧図の写し」とは、相続登記を促進するため、平成29年5月から全国の法務局で運用を始めた「法定相続情報証明制度」を利用することにより交付を受けることができる証明書のことで、戸籍に基づいて、法定相続人が誰であるかを登記官が証明したものです。

「法定相続情報一覧図の写し」は、図形式のほか、被相続人及び相続人を単に列挙する形式(列挙形式)により作成することもできますが、列挙形式では相続人の法定相続分が確認できない場合もあるため、相続税の申告書の添付書類として利用するときには、図形式のものであることが必要です。

また、「法定相続情報一覧図の写し」における子の続柄は、実子または養子のいずれであるかが分かるように記載されたものであることが必要です。子の続柄が単に「子」と記載されたものは、実子または養子のいずれであるかが分かりませんので、「法定相続情報一覧図の写し」を相続税の申告書の添付書類として利用するときは、長男、長女、養子など戸籍上の続柄で記載する必要があります。なお、被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本または抄本(コピー機で複写したものも含む)の添付も必要となります。

図形式の「法定相続情報一覧図の写し」のイメージ及び交付手続き等については、こちら(国税庁のwebサイト)をご確認ください。

 

セルフメディケーション税制

平成29年分の確定申告より、従来の医療費控除に加え、セルフメディケーション税制が始まります。セルフメディケーション税制とは、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方が、平成29年1月1日以後に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合には、一定の金額の所得控除(医療費控除の特例)を受けることができる制度です。特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、薬局などで購入できるOTC医薬品(一般用医薬品)に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)の購入費をいいます。

セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。

セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、申告される方が、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っていることが要件となります。具体的には、次の取組が、「一定の取組」に該当します。

1.保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】

2.市区町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者等を対象とする健康診査】

3.予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】

4.勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】

5.特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導

6.市町村が健康増進事業として実施するがん検診

特定一般用医薬品等購入費の範囲ですが、セルフメディケーション税制の対象となる商品には、購入の際の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されています。また、一部の対象医薬品については、その医薬品のパッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されています。

スイッチOTC医薬品の具体的な品目一覧は、厚生労働省ホームページに掲載の「対象品目一覧」をご覧ください。

次に具体的な手続きですが、セルフメディケーション税制の適用に関する事項を記載した確定申告書を所轄税務署長に提出します。
また、次の(1)の書類を確定申告書に添付し、かつ、(2)の書類を確定申告書に添付するか、又は確定申告書の提出の際に提示することが必要です。

(1) セルフメディケーション税制の明細書

(2) セルフメディケーション税制の適用を受ける方がその適用を受けようとする年分に一定の取組を行ったことを明らかにする書類(①氏名、②取組を行った年、③取組に係る事業を行った保険者、事業者若しくは市区町村の名称又は取組に係る診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名の記載があるものに限ります。)

セルフメディケーション税制の明細書の様式は、こちら(国税庁のwebサイト)をご覧ください。

なお、セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との選択適用となります。したがって、この特例の適用を受ける場合は、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。
また、これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできませんので注意する必要があります。

 

仮想通貨に関する所得の計算方法等

ビットコイン等の仮想通貨を売却または使用することにより生じる利益については、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となります。確定申告にあたり、仮想通貨を売却または使用することにより生じる損益を、どのように計算するかが気になるところですが、それについては、平成29年12月1日に国税庁のwebサイトで、個人課税課情報第4号「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公表されました。その概要は下記のとおりです。

・仮想通貨の売却
保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合、当該仮想通貨の取得価額の算定方法は、移動平均法を用いるのが相当とされています。ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いることも容認されています。

・仮想通貨での商品の購入
保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

・仮想通貨と仮想通貨の交換
保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となります。

・仮想通貨の分裂(分岐)
所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合は、取得時点の時価を基にして所得金額を計算します。仮想通貨の分裂(分岐)に伴い、新たに誕生した仮想通貨を取得した場合については、分裂(分岐)時点において取引相場が存在しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。したがって、その取得時点では所得は生じず、その新たな仮想通貨を売却または使用した時点において所得が生じることとなります。なお、その場合の取得価額は0円となります。

・仮想通貨に関する所得の所得区分
ビットコイン等の仮想通貨を売却または使用することにより生じる損益については、原則として、雑所得に区分されことは、記事の冒頭に記載したとおりです。しかし、事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられますので、事業所得に区分されます。このほか、その収入により生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。

・損失の取り扱い
仮想通貨の取引により、雑所得の金額に損失が発生した場合、雑所得以外の他の所得(給与所得等)と通算することはできません。所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得とされています。雑所得は、これらの所得に該当しないので、その所得の金額の計算上生じた損失がある場合でも、他の所得と通算することはできません。

なお、仮想通貨の売却等の数値例や計算方法等の詳細については、こちら(国税庁webサイト)をご確認ください。

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し

平成29年度税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額等が改正されました。この改正は、平成30年分以後の所得税について適用されますので、平成29年分の所得税(年末調整手続等)には、影響はありませんが、平成30年1月以降の毎月(毎日)の給与等の支払の際の源泉徴収のしかたには、影響してきますのでご注意ください。

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴う改正の概要は、下記のとおりです。

(1) 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正

①配偶者控除の控除額が改正されたほか、給与所得者等の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができないこととされました。改正前は、給与所得者等の合計所得金額の制限はありませんでした。

なお、配偶者控除の控除額は、給与所得者等の合計所得金額が900万円以下の場合は38万円、900万円超950万円以下の場合は26万円、950万円超1,000万円以下の場合は13万円となります。

②配偶者特別控除の控除額が改正されたほか、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下とされました。改正前は、対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満でした。

(2) 扶養親族等の数の算定方法の変更

給与等を支払う時に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収額表」により求めますが、計算に際して扶養親族等の数を算定する必要があります。
扶養親族等の数の算定に当たり、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされました。

源泉控除対象配偶者とは、給与所得者等(合計所得金額が900万円以下の人に限ります)と生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人および白色事業専従者を除きます)で、合計所得金額が85万円以下の人をいいます。

同一生計配偶者とは、給与所得者等と生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人および白色事業専従者を除きます)で、合計所得金額が38万円以下の人をいいます。

(3) 給与所得者の扶養控除等申告書等の様式変更等

「給与所得者の配偶者特別控除申告書」が「給与所得者の配偶者控除等申告書」に改められたことから、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする給与所得者は、その年の年末調整の時までに給与等の支払者に当該申告書を提出しなければならないこととされました。また、以下の申告書についても記載事項の見直しが行われています。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

②公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

③従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書

なお、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の詳細等は国税庁のwebサイトをご覧ください。

医療費控除等 領収書から明細書の添付へ変更

平成29年度の税制改正により、従来の医療費控除またはセルフメディケーション税制の適用を受ける場合、医療費等の明細書を添付することにより、領収書の提出が不要となりました。セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、従来の医療費控除との選択適用となりますので、いずれか一方を選択して適用を受けることになります。従来の医療費控除の適用を受ける場合は、医療費控除の明細書を添付します。セルフメディケーション税制の適用を受ける場合は、セルフメディケーション税制の明細書を添付します。

医療費控除の明細書には、次の事項を記載します。
(1)医療を受けた方の氏名
(2)病院・薬局などの支払先の名称
(3)医療費の区分(診察・治療、医薬品購入、介護保険サービス、その他の医療費)
(4)支払った医療費の額
(5)(4)のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

また、医療保険者から交付を受けた医療費通知書(例:健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」)を添付した場合は、医療通知に関する事項を記載することにより、明細書の記載を省略することができます。

セルフメディケーション税制の明細書には、次の事項を記載します。
1.申告する方の健康の保持増進及び疾病の予防への取組
(1)取組内容(健康診査、特定健康診査、予防接種、がん検診、定期健康診断など)
(2)発行者名(保険者、勤務先、市区町村、医療機関名など)
2.特定一般用医薬品等購入費の明細
(1)薬局などの支払先の名称
(2)医薬品の名称
(3)支払った金額
(4)(3)のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

上記の明細書を添付することにより、医療費等の領収書の提出は不要となりましたが、5年間は保存する必要があります。税務署から求められた時には、領収書を提示または提出しなければなりません。ただし、医療保険者から交付を受けた医療費通知書を添付した場合は、明細の記入を省略できるほか、領収書の保存も必要ないこととされています。

なお、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、医療費の領収書の添付または提示により、従来の医療費控除、またはセルフメディケーション税制の適用を受けることができる経過措置が設けられています。

上記の明細書の具体的な記載様式については、下記のリンク先(国税庁のwebサイト)をご覧ください。

医療費控除の明細書

セルフメディケーション税制の明細書

 

仮想通貨(ビットコイン等)取引と所得税

ビットコイン等の仮想通貨を使用することで生じた利益(以下仮想通貨の利益とします)について、所得税法上どの所得に分類するか、これまでは明確ではありませんでした。しかし、国税庁のタックスアンサーにより、(1)ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となること(2)このビットコインを使用することにより生じる損益は、原則として、雑所得に区分されることが明確になりました(事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除く)。

これにより、仮想通貨の利益は、上場株式や公社債など他の金融商品取引で発生した所得とは損益通算できず、所得に応じた累進税率が適用されることが明らかとなりました。また、仮想通貨の利益がマイナス(赤字)となった場合でも、損失を繰り越して、将来の利益と相殺することもできません。

同じ雑所得でも、外国為替証拠取引(FX)や先物取引の差金等決済により生じた所得は、他の所得と区分して、20.315%の税率(復興特別所得税、地方税を含む)による申告分離課税となります。また、損失が出た場合は、3年間の繰り越しが認められており、将来の利益と相殺することができます。

それに対して、仮想通貨の利益は、給与所得等と合わせて計算した所得金額に応じて5%から45%の累進税率が適用され、損失の繰り越しもできないので、他の金融商品と比べると税務上のメリットが限られるという声もあるようです。

私道の用に供されている宅地の評価

相続税や贈与税を計算する際の私道の用に供されている宅地の価額は、財産評価基本通達(以下「評価通達」とします)24にしたがい評価します。具体的には、私道の用に供されている宅地の価額は、自用地の価額の100分の30に相当する価額によって評価します。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しません。

私道については、道路としての利用状況や、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益をすることに制約が存すること等の事実関係に照らして判断します。

従来の取り扱いは、上記の事実関係に照らして判断した結果、「歩道状空地」の用に供されている宅地については、建物の敷地の一部として、「評価通達」24を適用せずに評価していた事例がありましたが、最高裁判所平成29年2月28日判決の判示事項を踏まえ、国税庁は「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱いを明らかにしました。

具体的には、下記の要件を満たす「歩道状空地」については、「評価通達」24に基づき評価することされています。

1・都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備されている

2・道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものである

3・居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている

上記の取扱いは、過去に遡って適用されます。これにより、過去の相続税又は贈与税(以下「相続税等」といいます。)の申告の内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができます。

なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。

定期同額給与の改正(平成29年度税制改正)

平成29年度の税制改正により、役員給与等について、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の見直しが行われています。これらの見直しのうち、中小企業の実務に関係することが多いと思われる定期同額給与の見直しについて、説明させていただきます。

定期同額給与とは、その支給時期が1月以下の一定期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずる一定の給与です。

平成29年度の税制改正前は、1月以下の一定期間ごとに同額で支給される給与のみが損金算入の対象とされていましたが、改正後は税及び社会保険料の源泉徴収等後の金額(手取り額)が同額である定期給与が損金算入の対象に追加されました。

また、確定申告書の提出期限の延長の特例に係る税務署長の指定を受けた法人について、定期同額給与の改定期限の見直しが行われ、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日からその指定の月数に2を加えた月数を経過する日までに改正されています。

上記の改正については、平成29年4月1日以後に支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をする役員給与について適用されます。