平成27年8月28日に公布されました「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律(承継円滑化法)」が平成28年4月1日から施行されています。 これにより、経営承継円滑化法における遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充することや、小規模企業共済制度における親族内承継等の共済金の引上げ等の措置が講じられています。
改正の背景としては、事業承継の形態の多様化があります。20年前は90%を親族内承継が占めていましが、近年は親族外承継が約40%と増加する傾向にあります。また、中小企業基本法等で掲げられた「事業承継の円滑化」を促進し、中小企業・小規模事業者の持続的発展を図る目的で改正が行われました。
今回は改正のうち、遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充する改正について、説明させていただきたいと思います。
安定した会社経営のためには、後継者への株式集中が必要です。ただし、後継者以外の遺族には遺留分が存在します。遺留分の放棄が法的に確定しないと、後継者は他の遺族から後で遺留分相当の株式を請求される可能性があります。遺留分放棄の確定には、遺留分権利者一人一人が家庭裁判所の許可を得ることが必要となります。これは非常に手間がかかるので、手続が進みにくいと言えると思います。
そこで経営承継円滑化法では、後継者が、経営者から贈与を受けた株式について、事前に後継者以外の親族と合意し、経済産業大臣の確認を受けることにより、遺留分放棄の法的確定に係る家庭裁判所の申請手続を単独で行うことが可能となる制度(遺留分特例制度)が設けられています。
改正前は、遺留分特例制度の対象が親族内継承に限定されていましたが、今回の改正で親族外承継の際にも適用できるように制度が拡充されました。これにより、事業承継が円滑に進み、中小企業・小規模事業者の持続的発展が促進されることが期待されています。
「事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例」についの詳細につきましてはこちら(中小企業庁のwebサイト)をご覧ください。