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経営承継円滑化法の改正2

平成27年8月28日に公布されました「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律(承継円滑化法)」が平成28年4月1日から施行されています。 これにより、経営承継円滑化法における遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充することや、小規模企業共済制度における親族内承継等の共済金の引上げ等の措置が講じられています。

前回の投稿では、遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充する改正について、説明させていただきたました。今回は、小規模企業共済制度の改正について、説明させていただきたいと思います。

小規模企業共済制度とは、小規模企業の個人事業主、共同経営者や会社等役員の方が退職や事業を廃業した時に、生活の安定や事業の再建を図るための資金を予め準備しておく、中小企業基盤整備機構(以下中小機構とします)が運営する経営者のための退職金制度です。今回の改正の主な内容は下記のとおりです。

1.小規模企業者の事業承継の円滑化
小規模企業者の事業承継の円滑化を図るため、個人事業者が親族内で事業承継した場合や65歳以上の会社役員が退任した場合の共済金が引き上げされました。

・個人事業者の親族内における事業承継の円滑化
現行制度では、廃業した場合に最も多額の共済金が支給されていました。これを個人事業者が親族内で事業承継した場合も、廃業と同額支給するように改正されました。

例 月額4万円で20年間納付した場合の支給額
廃業した場合 1,115万円
親族内で事業承継した場合 改正前 968万円 改正後 1,115万円

・会社役員の次世代への交代の円滑化
現行制度では「65歳以上かつ15年以上加入」で、会社役員に在籍したまま高い共済金が支給されていました(老齢給付)。これを65歳以上の会社役員については、退任時の支給額を、老齢給付と同額支給するように改正されました。

例 月額4万円で10年間納付した場合の支給額
老齢給付 504万円
役員退任 改正前 480万円 改正後(65歳以上の場合)504万円

2.小規模企業者の経営状況に応じた掛金の柔軟化
改正前は、掛金月額の減額は「事業経営が著しく悪化している」などの理由がある場合にのみ認められていました。また、このような理由があることを委託機関(中小機構の代理店となっている金融機関や商工会等)により確認してもらうことが必要でした。
今回の改正により、平成28年4月1日以降に減額の手続きをする場合には、理由を問わず、契約者の希望に応じて減額することが可能となりました。 減額をするにあたり「事業経営が著しく悪化している」などの減額理由が不要となりましたので、減額理由を委託機関で確認してもらう必要もなくなりました。

経営承継円滑化法の改正1

平成27年8月28日に公布されました「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律(承継円滑化法)」が平成28年4月1日から施行されています。 これにより、経営承継円滑化法における遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充することや、小規模企業共済制度における親族内承継等の共済金の引上げ等の措置が講じられています。

改正の背景としては、事業承継の形態の多様化があります。20年前は90%を親族内承継が占めていましが、近年は親族外承継が約40%と増加する傾向にあります。また、中小企業基本法等で掲げられた「事業承継の円滑化」を促進し、中小企業・小規模事業者の持続的発展を図る目的で改正が行われました。

今回は改正のうち、遺留分特例制度の対象を親族外へ拡充する改正について、説明させていただきたいと思います。
安定した会社経営のためには、後継者への株式集中が必要です。ただし、後継者以外の遺族には遺留分が存在します。遺留分の放棄が法的に確定しないと、後継者は他の遺族から後で遺留分相当の株式を請求される可能性があります。遺留分放棄の確定には、遺留分権利者一人一人が家庭裁判所の許可を得ることが必要となります。これは非常に手間がかかるので、手続が進みにくいと言えると思います。

そこで経営承継円滑化法では、後継者が、経営者から贈与を受けた株式について、事前に後継者以外の親族と合意し、経済産業大臣の確認を受けることにより、遺留分放棄の法的確定に係る家庭裁判所の申請手続を単独で行うことが可能となる制度(遺留分特例制度)が設けられています。

改正前は、遺留分特例制度の対象が親族内継承に限定されていましたが、今回の改正で親族外承継の際にも適用できるように制度が拡充されました。これにより、事業承継が円滑に進み、中小企業・小規模事業者の持続的発展が促進されることが期待されています。

「事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例」についの詳細につきましてはこちら(中小企業庁のwebサイト)をご覧ください。

軽減税率対策補助金について

軽減税率対策補助金とは、消費税軽減税率制度(複数税率)への対応が必要となる中小企業・小規模事業者等の方々が、複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修などを行う場合に、その経費の一部を補助する制度です。

「所得税法等の一部を改正する法律」の成立日(平成28年3月29日)から平成29年3月31日までに導入または改修等が完了したものが支援対象となります。平成28年3月29日以降に複数税率対応レジを購入された方は、補助金の申請をするために購入したレジの領収書等の証拠書類を保存しておくことをおすすめします。

軽減税率対策補助金には、次の2つの申請類型があります。

A型 複数税率対応レジの 導入等支援
複数税率に対応できるレジを新しく導入したり、対応できるように既存のレジを改修したりするときに使える補助金です。

B型  受発注システムの 改修等支援
電子的な受発注システム(EDI/EOS等)を利用する事業者のうち、複数税率に対応するために必要となる機能について、改修・入替を行う場合に使える補助金です。

A型は、レジの種類や複数税率への対応方法(導入/改修)により合計4種類の申請方式に分かれます。いずれも、補助額はレジ1台あたり20万円が上限です。基本的には、補助率は2/3ですが、機器により補助率が異なるケースがあります。また、複数台数申請等については、1事業者あたり200万円が上限となります。

B型は、指定事業者に改修等を依頼するか、事業者自身で行うかで2種類の申請方式に分かれます。補助上限額は、発注システム側・受注システム側の改修・入替ごとに異なります。小売事業者等の発注システムの場合の補助上限額は1,000万円、卸売事業者等の受注システムの場合の補助上限額は150万円で、両方の改修・入替が必要な場合の上限は1,000万円となります。補助率は、改修・入替に係る費用の2/3です。補助対象範囲外の機能を含むパッケージ製品・サービスについては、初期購入費用の1/2を補助対象経費とし、これに補助率を乗じるものとします。

補助金の申請は、基本的には申請書(数枚)と証拠書類(領収書や請求書などの内訳の分かる支払いの証拠書類、製品の証明書など)で行うことができます。なお、A型、B型ともリースによる導入も補助対象となります。詳細につきましては、軽減税率対策補助金事務局のwebサイトをご参照ください。

平成28年6月1日、安倍内閣総理大臣は、消費税率の10%への引上げ及び軽減税率制度の導入時期を平成31年10月とする旨を表明しました。軽減税率制度の導入時期の延期に伴い軽減税率対策補助金の扱いはこちらをご覧ください。

「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集が改訂されました

平成27年7月31日に「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集が改訂され公表されました。

「経営者保証に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」とします)は、経営者の個人保証について、
(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を支援することを目的に平成26年2月より適用が開始されています。

「ガイドライン」の活用に関して、金融機関等により広く実践されることが望ましい取組みを事例集として取りまとめた参考事例集が事例を追加し改訂版が公表されました。

これにより、金融機関等による「ガイドライン」の積極的な活用に向けた取組みが促進され、「ガイドライン」が融資慣行として浸透・定着していくこと、中小企業等にとっても思い切った事業展開や早期の事業再生等の取組みの参考となることが期待されています。

事例の中には、事業計画の実現可能性等を考慮して経営者保証を求めなかった事例、経営管理の強化に取り組んでいる取引先に対して経営者保証を求めなかった事例などがあります。

当事務所では、事業計画の策定や経営管理の強化の支援にも力を入れています。

「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集(平成27年7月改訂版)については、こちら(金融庁のホームページ)をご覧ください。

「経営者保証に関するガイドライン」についてはこちら(全国銀行協会のホームページ)をご覧ください。