平成29年3月17日に改正「中小企業の会計に関する指針」が公表されました。今回の改正では、従来の中小企業の会計に関する指針第89項にあった「今後の検討事項」(資産除去債務)への対応として、固定資産の項目に新たに敷金に関する会計処理が明記されました(第39項)。また、税効果会計については、平成27年12月28日に企業会計基準委員会から企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」が公表されたことに伴い、関連項目の見直しが行われています。
「中小企業の会計に関する指針作成検討委員会」が中小企業にアンケートを行った結果、賃貸借契約に基づく原状回復義務以外の資産除去債務(PCB廃棄物の処分義務、定期借地権契約終了時の建物等の除去義務、アスベストの除去義務、土壌汚染の浄化義務等)による影響を受ける企業の範囲が限定的であることが明らかになりました。
このため、「資産除去債務に関する会計基準」の全面的な適用は馴染まないと判断され、今回の改正では、資産除去債務を「各論」の見出し項目として取り扱わないことになりました。また、賃貸借契約に基づく原状回復義務については、「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項に規定される敷金の簡便法を参考に、中小企業の実態に合った取扱いを固定資産の項目に新たに設ける修正(第39項)を行いました。
今回の改正で明記された敷金に関する会計処理(第39項)は、下記のとおりです。
敷金は、取得原価で計上する。このうち、建物等の賃貸借契約において返還されないことが明示されている部分の金額については、税法固有の繰延資産に該当し、賃貸借期間にわたって償却する。
また、返還されないことが明示されていない部分の金額については、原状回復義務の履行に伴い回収が見込まれない金額を合理的に見積もることができる場合は、当該金額を減額し、費用に計上する。
平成28年1月26日に「中小企業の会計に関する指針」の改正が行われました。今回は、重要性の原則、固定資産の減損損失、税効果会計、誤謬の訂正に関する注記についての改正が行われていますが、いずれも「中小企業の会計に関する指針」における従来の取り扱いについて明確化を図ったもので、従来の取り扱いを変更することを意図したものではありません。各項目の改正の趣旨は次のとおりです。
(重要性の原則)
第9項(2)において「重要性の原則は、本指針のすべての項目に適用される」という文章が追加されています。これは重要性の原則が「中小企業の会計に関する指針」の全ての項目に適用され、各論に特段の記載がない場合でも、重要性の乏しい項目に関しては簡便な会計処理の方法によることができることを明確にすることを意図したものです。
(固定資産の減損損失)
第36 項において、固定資産の減損を行わなければならない場合について、従来は「予測することができない減損が生じたとき」となっていましたが、会社計算規則第5条第3項第2号の記載に合わせて、「予測することができない減損が生じたとき又は減損損失を認識すべきとき」として明確化したものです。なお、「中小企業の会計に関する指針」では、第36 項第2段落以降で減損損失を認識すべき場合を例示していますが、今回の改正により、固定資産の減損に係る会計基準が適用される場合を限定している従来の取扱いについての変更はありません。
(税効果会計)
第61 項(5)において、一時差異に重要性がない場合の取扱いについて、従来は「一時差異の金額に重要性がない場合には税効果会計を適用しないことができる」としていましたが、「要点」の記載と整合性を図るため、「一時差異に重要性がない場合には繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しないことができる」と表現を変更したものであり、取り扱いについては従来からの変更はありません。
(誤謬の訂正に関する注記)
第82 項において、「中小企業の会計に関する指針」を適用している会社が、企業会計基準第24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づく会計処理を行わない場合には、個別注記表における誤謬の訂正に関する注記は必要ないことを明確化したものです。
なお、資産除去債務会計基準については、改正後も「今後の検討事項」として「本指針における資産除去債務の取扱いについては、今後の我が国における企業会計慣行の成熟を踏まえつつ、引き続き検討することとする。」とされており、従来と同様の取り扱いとなっています。
役務の提供の対価の会計処理及び表示については、取引の経済実態や金額の重要性等を考慮して、各社で適切な名称の科目に分類することとされています。
労働者派遣に対する対価についても、重要性がある時には独立掲記することが必要となりますが、その際の勘定科目について、物件費などの科目が使われていることがあるようです。
しかし、物件費などでは労働者の派遣を受けて、その人材を活用しているという経営の実態を適切に反映しているとは、言い難いと思われます。例えば人材派遣費などの勘定科目で会計処理及び表示することが望ましいと思われます。
吹田市の谷公認会計士・税理士事務所-起業・経営計画・税務会計